
毎日使っている補聴器。「あれ?なんだか聞こえにくいな」と感じたことはありませんか?
ピーピーという音がしたり、急に音が小さくなったりすると、「もしかして故障?」と不安になりますよね。
でもそのような症状があっても、必ずしもすぐに修理が必要とは限りません。
まずは落ち着いて、チェックすべきポイントを確認してみましょう。
この記事では、補聴器によくある不具合の症状とその対処法を解説します。
そして、修理が必要な場合の流れや費用感、日常的にできる予防法までわかりやすくご紹介します。
「これって故障?」「どこに相談すればいい?」と迷っている方は、ぜひチェックしてみてください。
1 これは故障じゃない!【症状別でチェック】
「電源が入らない」、「音が小さい」や「ピーピー音がする」などの症状は、確かに故障っぽく思われます。
しかし、実は、これらは故障ではないことがほとんど。簡単に改善するケースも少なくありません。
1.1 音に関する違和感
音がまったく聞こえない
‣電源は入っていますか?
→意外とスイッチが切れていたり、電池や充電切れの場合があります。
‣電池残量はありますか?
→電池式補聴器の場合は新しい電池に交換、充電式の場合は充電器に入れてしっかり充電してみましょう。
特に充電式の場合は、充電端子がしっかり接続しているか、本当に充電が始まっているかを確認してみてください。
‣音の出口(耳に入れる部分)に汚れや耳垢が詰まっていませんか?
→補聴器本体や耳せんの「音の出口」に皮脂や耳垢などが詰まっていると、音がうまく出ない場合があります。
やわらかい布や専用ブラシで音の出口を優しく掃除してみてください。
専用ブラシの使い方の例
‣チューブやレシーバーに水分や異物はありませんか?
→補聴器を濡らしてしまったり、補聴器内部で結露が発生したりすると、補聴器からの音が上手く伝わってこないことがあります。
まずは補聴器専用の乾燥器でしっかり乾燥させましょう。
また、その他の異常がないかを確認するために、補聴器購入店に持っていって、プロに見てもらいましょう。
音が小さい/こもる
‣音量の設定が下がっていませんか?
→まずは音量の設定を確認しましょう。お持ちの補聴器がスマホ専用のアプリと連携している場合、アプリで音量を調節してみましょう。
音がいつもと違う/歪んで聞こえる
‣補聴器の設定が変わっていませんか?
→音質の変化は、補聴器の設定が変わった可能性があります。
補聴器に複数のプログラムが設定されている場合は、プログラムを切り替えていないかなどを確認しましょう。
また最近、補聴器販売店で補聴器を調整した場合は、それが理由かもしれません。
‣お使いの補聴器は長年使用していませんか?
→長年使用している場合は、内部の電子部品の劣化も考えられます。
ピーピーと高い音がする(ハウリング)
補聴器を使っていると、突然「ピーピー」鳴ることがあります。
このケースの多くの場合は故障ではなく、「ハウリング」と呼ばれる現象です。
この現象の最も一般的な原因は、補聴器から出た音が耳の隙間から漏れて、再び補聴器のマイクに入り込むことです。
この場合は、まずは耳にしっかり補聴器が入っているか確認してみてください。
それで改善しないなら、補聴器購入店にご相談ください。主な対策は、以下の2つです:
- オーダーメイドの耳あな型補聴器なら、補聴器の形状を修正してもらうことで改善できる
- 既製品の補聴器なら、耳せんを変更したり、「イヤーモールド」という耳の形に合わせた耳せんを作ったりすることで改善できる
※詳しくはこちら:
【補聴器が「うるさい」と感じる?4つの原因とそれぞれの対策を徹底解説】
1.2 電源・充電に関するトラブル
電源が入らない/すぐ切れる
‣電池の残量・充電が切れていませんか?
→新しい電池を試してみたり、しっかりと充電して改めて電源を入れてみたりしましょう。
‣電池式補聴器なら:電池の向きは合っていますか?
→電池のプラス極・マイナス極が正しいかを確認しましょう。特に新しい電池に交換した直後は、注意しましょう。
‣電池式補聴器なら:電池室はしっかり閉まっていますか?
→電池室がしっかりと閉まっていないと電源がうまく入らないケースがあります。
しっかりと閉まっているか、確認してみてください。
充電できない(充電式の場合)
‣補聴器は正しく充電器にセットされていますか?
→補聴器の本体が正しく充電器にセットされているかを再確認しましょう。
また、充電開始のLEDライトの色など、動作サインを確認しましょう。
・充電器のコード類は適切に接続されていますか?
充電用のコードが充電器にしっかりと入っているか、またそのコードがしっかりとコンセントに接続されているかを確認してください。
また、充電器によっては「タコ足配線」をすると上手く充電されない場合があります。充電器から直接壁のコンセントに繋ぎましょう。
‣補聴器本体や充電器の電気端子部分に汚れが付着していませんか?
→補聴器本体と充電器の接続端子がきれいかを確認しましょう。
この部分をきれいにする際は、乾いた柔らかい布で優しく拭きましょう。
これらのことを確認しても、やはり正常に動作しないのであれば、故障である可能性があります。
補聴器販売店でチェックしてもらってください。
2 これは故障!よくある故障原因
それでは、ここからは実際に発生しうる補聴器の故障についてご説明します。
以下で紹介するような要因が、故障や不具合を引き起こす主な原因となります。
2.1 汗や湿気によってサビる・腐食する
補聴器は精密機械のため、汗や湿気などの水分にとても弱いものです。
汗や湿気が入り込むと、マイクやレシーバー、基板などに影響を与え、音が出にくくなります。
近年、防水性能を備えた補聴器も増えていますが、汗に含まれる塩分は腐食の原因となるため、完全に安心というわけではありません。
場合によって、補聴器の内部の金属パーツが腐食・サビなどを起こし、ダメージを与える可能性もあります。
特に梅雨の時期や冬場の結露は、補聴器内部の湿気が多くなるため、十分な注意が必要です。
2.2 耳垢や汚れが詰まって音が出なくなる
補聴器は耳あなの奥にまで入るので、どうしても耳垢がたまってしまいます。
補聴器の音の出口が詰まっていると、音がこもったり出にくくなったりして、故障の原因になることもあります。
2.3 落下による衝撃で故障する
補聴器は精密機器であるため、落下の衝撃に非常に弱いという特徴があります。
どんなに丁寧に扱っていても、うっかり手を滑らせてしまうことは誰にでも起こりうる事故です。
落下による衝撃が原因で、内部のケーブルが断線したり、本体にひび割れが生じたりする場合などがあります。
また、充電式の補聴器では、電気端子部分の接触不良を引き起こすこともあり、補聴器が正常に使用できなくなってしまいます。
2.4 電池交換時の取扱ミスによる破損
電池交換は日常的な作業ですが、意外にも故障の原因となりやすい場面でもあります。
電池のプラスマイナスを逆に入れてしまったり、バッテリードアに力を入れすぎて無理に開閉したりすると、ドア部分の破損につながる可能性があります。
バッテリードアがうまく閉じられないと、電源が入らなくなるだけでなく、隙間から湿気が侵入しやすくなり、さらなる故障の原因を作ってしまうこともあります。
2.5 ペットによる予期しない事故
意外かもしれませんが、ペットが原因で補聴器が壊れてしまうケースも少なくありません!
補聴器は毎日肌に触れているため、飼い主さんの匂いが付着します。
ペットにとって大好きな飼い主さんの匂いのするものは、とても魅力的に感じられるのかもしれません。
そのため、興味を持ったペットが補聴器を噛んでしまい、破損してしまうことがあります。
下の写真は、実際に小型犬が噛んだ補聴器です。
ペットによる事故は補聴器の故障だけでなく、補聴器の部品や電池をペットが誤飲してしまう危険性もあるため、保管場所には十分な注意が必要です。
3 補聴器が故障したときの対応フォロー
補聴器の調子がおかしいと感じて、「1.補聴器がうまく動かない…これは故障?【症状別でチェック】」でご紹介した内容を試しても改善しない場合は、故障の可能性があります。
補聴器が故障しているかもしれないと思ったら、対応の流れは主に以下の3ステップです:
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- まずは購入店へ補聴器を持っていき、相談を
- お店で対応可能な場合は、その場で修理や調整を行ってもらう
- お店での対応が難しい場合は、補聴器メーカーでの修理が必要
では、それぞれのステップを詳しく見ていきましょう。
3.1 ますは購入店へ補聴器を持っていき、相談を
自分でできる確認を一通り試しても改善しない場合は、早めに購入した販売店へ補聴器を持ち込み、プロに見てもらいましょう。
補聴器を購入したお店に持っていけば、購入時の詳細なデータや、過去対応履歴や保証内容も確認できるため、スムーズに対応してもらえます。
補聴器がどのような症状なのか、その症状が出てしまった原因に心当たりがあるか、等をお店の人に伝えましょう。
3.2 店舗内での対応例
お店では補聴器を点検し、お店で対応可能な処置に進みます。
補聴器販売店では専用の機械やツールを使って、補聴器の内部にたまった湿気を取り除いたり、細かい汚れを吸い取ったりしてくれます。
これらの処置をすることで、症状が改善することもあります。
対応内容はお店によってことなることもあるので、補聴器を購入したお店に相談してみてください。
なお、このようなプロによるクリーニングは、3ヶ月に1度を目安に依頼するのがお勧めです。故障の可能性を減らすためにも、定期的にお店に行きましょう。
3.3 メーカー修理が必要な場合
お店での対応後も改善が見られない場合、または重度のトラブルがある場合は、お店を通してメーカーに修理を依頼します。
メーカーでの修理では、補聴器のアンプなどの細かな部品の交換などが多いようです。
修理期間は通常1週間〜2週間程度かかります。
その間、補聴器が無い生活を送るの?と心配になりますが、補聴器販売店によっては代替の補聴器をの貸し出してくれます。
ぜひスタッフにご相談してみてください。
4 修理費用と保証制度について
補聴器が故障した際に、特に気になるのが「修理費」ではないでしょうか?
そして、修理費に大きく関わってくるのが補聴器の「保証制度」です。
この2点については統一した答えはなく、メーカーや器種、故障の内容などによって大きく異なります。
4.1 一般的な保証制度について
多くの補聴器メーカーでは、補聴器の購入時に「一定期間の無償修理保証」が付いています。
どの程度の期間か、どの程度保証されるのか、はメーカーや補聴器の器種によって異なります。
一般的には、保証期間内(多くの場合は購入から約2年間)で、保証対象の故障(多くの場合は自然故障)であれば無償で修理してもらえます。
ただし、水没や落下による破損など、使用者のミスによる破損は保証対象外になるケースもあるため、注意が必要です。
詳しくは、補聴器販売店のスタッフに相談して確認しましょう。
修理保証の期間が過ぎると、有償の修理になる場合が多いようです。
また、一部のメーカーでは、有料オプションとして保証期間を延長できるサービスも用意されています。
※例:シグニア補聴器の保証制度
補聴器の保証制度について、詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひご覧ください:
【補聴器の保証を完全ガイド!故障・紛失・修理で後悔しないためのポイント】
4.2 お持ちの補聴器の保証の確認方法
まずは、補聴器購入時にもらった資料や説明書の中から「保証書」を探してみましょう。
もし見当たらない場合でも、購入した販売店に問い合わせれば、保証の有無を確認してもらえます。
また、補聴器の使用年数や故障の内容によっては、修理よりも補聴器の買い替えを検討した方が良いケースもあります。
補聴器の技術は日進月歩、数年で技術力が大きく進化するので、新しい補聴器を使い始めたほうがより良い日常生活を送れる可能性があります。
補聴器が故障した際には自己判断せずに、専門家に相談し、自分にとって最適な対応を選びましょう。
5 故障を防ぐためにできる日常ケア
補聴器は毎日身につける小さな器機で、清潔に保つことがとても重要です。
同時に、補聴器の故障を防ぐためには、日々のお手入れがとても大切です。
ここでは、今日からすぐにできる簡単な日常ケアをご紹介します。
補聴器のお手入れについて、もっと詳しく知りたい方や、正しい方法をもう一度確認したい方は、こちらのブログもぜひご覧ください:
【簡単3ステップで補聴器を清潔に|補聴器お手入れの基本を徹底解説】
5.1 自宅でできる毎日のケアを習慣に
補聴器をより長く快適に使い続けるためには、自宅でのこまめなケアが欠かせません。
と言っても意外とシンプル、次の3ステップになります。
- 補聴器本体の汚れを拭き取る
- 音の出口部分の汚れを取り除く
- 乾燥ケースで保管して湿気を除去する
- 補聴器本体の汚れを拭き取る
補聴器を触る前には、手を清潔で乾いた状態にしておきましょう。
そのうえで、柔らかい布(メガネ拭きのようなもの)または乾いたティッシュで、補聴器の外側を優しく拭き、表面の汚れを取り除きましょう。
- 音の出口部分の汚れを取り除く
補聴器が正常に音を出し続けるようにするためには、「音の出口部分」を常にきれいに保つことが大切です。
専用ブラシで、優しく耳垢やほこりを落としましょう。
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乾燥ケースで保管して湿気を除去する
最後に補聴器をしっかり乾燥させましょう。補聴器専用の「乾燥カップ」または「乾燥機」を使います。
電池式補聴器の場合は、電池を外したうえで、補聴器本体のみを乾燥させましょう。補聴器専用の乾燥カップ
補聴器専用の乾燥機
※詳しい方法や道具の使い方はこちらで解説しています:
【簡単3ステップで補聴器を清潔に|補聴器お手入れの基本を徹底解説】
5.2 プロによる定期的なクリーニング点検も
自宅で行う日常のケアはとても大切ですが、補聴器の細かい部分や内部は十分にケアすることが難しいです。
そのため、補聴器販売店でのプロによる定期的なお手入れをお勧めします。
お店では専用の機械やツールを使って、目に見えない内部の湿気や汚れを取り除いたり、補聴器の点検をしたりすることができます。
販売店でのメンテナンスは、3ヶ月に1度を目安に受けることがおすすめです。
販売店によって、お手入れ内容が異なることもあるので、補聴器購入販売店に相談してみてください。
まとめ
補聴器がうまく動かないと、「もう故障かな…」と不安になるかもしれません。
でも、まずは1章で紹介した、自分で確認できるポイントを一つひとつチェックしてみましょう。
それでも改善しない場合は、早めに購入した販売店に補聴器を持ち込み、プロに見てもらいましょう。
故障原因の場合によっては、お店で対応できるケースもあれば、それを超えてメーカーでの修理が必要になる場合もあります。
また、修理に出す前に、必ずお持ちの補聴器の保証制度を確認しましょう。
大切な補聴器をより長く、適切に使うためにも、日々のケアと、定期的なプロによるクリーニング・点検を習慣づけていきましょう。