補聴器と防災|地震・台風など災害時に困らないための備え方

【各地で発生する様々な災害により被害を受けた皆様に、心からのお見舞いを申し上げます】

 

地震、台風、豪雨…。日本で暮らす以上、災害はいつ誰の身に起きてもおかしくありません。

災害が起きたとき、また避難生活をするときには、補聴器を使っている人やその家族ならではの注意点があります。

避難のアナウンスが聞き取れない、周りの人とうまくコミュニケーションが取れない…。

こうした場面は、普段以上に大きな「危険」につながる可能性があります。

この記事では、補聴器ユーザーが災害に備えて「今日からできること」を、持ち出し品から日頃の心構えまで具体的にまとめました。

1 なぜ補聴器ユーザーに「災害への備え」が重要なのか

災害時、多くの情報は「音」で伝えられます。

  • 携帯電話からの緊急速報
  • 避難を呼びかける防災無線や火災報知器の音
  • 緊急車両の音
  • 周囲の人の呼びかけの声
  • 避難所でのアナウンス
  • テレビやラジオからのニュース

難聴があると、このような音声情報を受け取ることが難しく、避難のタイミングを逃してしまう「機会損失」につながりかねません。

また、聞こえないことで周囲とのコミュニケーションがうまくいかず、助けを求めたい時、危険を知らせたい時に意思疎通ができないというケースも考えられます。

これは、命に関わる危険に直結する可能性がある、見過ごせない問題です。

さらに、避難生活が長引くと、情報や会話から取り残されることで孤立感を強めてしまう方も少なくありません。

こうしたリスクを減らすために大切なのが、「聞こえるようにする」を前提とした事前の備えです。

次の章から、具体的に何を準備しておけばよいのか見ていきましょう。

 

緊急時には音による情報提供が多くあります

2 補聴器に関する備え

2-1 予備の補聴器を非常持ち出し袋に

補聴器ユーザーの防災対策として、まず優先して検討していただきたいのが「予備の補聴器を非常持ち出し袋に入れておく」ことです。

災害時は、避難の混乱の中で補聴器を紛失したり、破損したりするリスクがあります。

また、地震の揺れや浸水で、自宅にある補聴器を取りに戻れない状況も想定されます。

もし予備の補聴器があれば、こうした万一の時にも「聞こえない」時間を最小限に抑えることができます。

使わなくなった補聴器や集音器があるなら、処分せずに非常持ち出し袋に入れましょう。

すべての方が予備の補聴器を用意できるわけではないと思いますが、「もしもの時に聞こえる手段が一つでも多くある」ことは、災害時の安心材料になります。

まずは今使っていない補聴器がないか、確認するところから始めてみてください。

2-2 電池式:予備電池のストック

電池式補聴器を使っている人は、補聴器電池を非常持ち出し袋に入れ、また自宅に多めにストックしておきましょう。

災害時は店舗が営業できなかったり、交通網の乱れで買い物に行けなかったりすることが想定されます。

普段使っている分に加えて、最低でも1〜2週間分の電池を非常持ち出し袋や自宅の備蓄品に入れておくと安心です。

補聴器電池は未開封であれば数年間保存が可能なものが多いですが、使用期限があるため、定期的に入れ替えるようにしてください。

非常持ち出し袋は定期的に中身を確認しますよね。その時に電池を取り出して、新しい電池を入れる癖をつけてはどうでしょうか。取り出した電池は普段使いにすれば無駄になりませんね。

2-3 充電式:モバイルバッテリー・ポータブル電源

充電式補聴器を使っている人にとって、災害時に特に注意したいのが「停電」です。

充電できずに補聴器がその機能を失ってしまわないように、以下のようなものを備えておくと安心です。

モバイルバッテリー

補聴器の充電器自体をUSB給電できるタイプなら、モバイルバッテリーで対応可能です。
充電速度などが自分の充電器と合うかを必ず確認してください。

ポータブル電源(大容量バッテリー)

複数日分の電力を確保したい場合におすすめです。
スマートフォンの充電など、様々な用途に役立ちます。

予備の充電器

自宅用と持ち出し用で分けておくと、いざという時に慌てずに済みます。もちろん充電用のコードも合わせておきましょう。
持ち出し用は非常持ち出し袋に入れておきましょう。

普段から補聴器の充電器がどのような給電方式か(USB対応かどうかなど)を確認しておくとよいでしょう。

充電式補聴器とは?電池式との違いは?おさえておくべき基礎知識

2-4 防湿・防水ケースでの保管

補聴器は精密機器のため、水濡れや高湿度に弱いという特性があります。
そのため、濡らさずに持ち出せるよう工夫が必要ですし、避難時に乾燥状態を保てるようにする必要があります。

また、せっかく持ち出した補聴器が破損しないような工夫も必要です。

  • 補聴器は専用のケースなど「頑丈な入れ物」に入れる
  • 補聴器が入ったケース、補聴器用電池や充電器、補聴器用乾燥ケースを「防水の袋(ジップ袋など)」に入れる
  • これらはなるべく荷物の上の方に入れ、破損しないように、取り出しやすいようにする

こうすることで、移動時の破損や浸水から補聴器を守り、避難時にも補聴器を安心して使うことができるでしょう。

合わせて読みたい:補聴器が濡れた!プロが教える3つの緊急対処法 梅雨も安心!湿気対策

非常持ち出し袋に補聴器を入れるときは防水して

 

補聴器の普段の保管場所についても、防災の観点から一度見直してみるとよいでしょう。

3 非常持ち出し袋に入れておきたいもの

補聴器ユーザーの非常持ち出し袋には、一般的な防災グッズに加えておくと安心なものを、用途別にまとめました。

    補聴器を使用するために

    • 補聴器
    • 補聴器用の電源(電池、充電器、モバイルバッテリー)
    • 補聴器用の乾燥ケースやお手入れ用品

    コミュニケーションをとるために

    • 筆談用具(メモ帳、小型ホワイトボード、筆記用具など)
    • 笛やブザー(音声で助けを呼べない場合の代替手段として)
    • 懐中電灯(暗い場所でも筆談や身振りが見えるように)

    難聴だと知らせるために

    • ヘルプカード、耳マークのグッズ(バッジ、スカーフ、ビブスなど)
    • 身体障害者手帳、お薬手帳

    ご自分の非常持ち出し袋を確認し、少しずつでもこれらのアイテムを加えていってください。

    4 災害時のコミュニケーション方法

    電話がつながらない時は、テキストメッセージを活用

    災害発生直後は、被災地への電話が集中してつながりにくくなる「輻輳(ふくそう)」という状態が起こることがあります。

    過去の大きな地震でも、音声通話がほとんどつながらない状況が発生しました。

    このような時は、電話よりもテキストメッセージの方がつながりやすい傾向があります。

    普段使っているメールやLINEなどのメッセージアプリ、各携帯電話会社が提供する「災害用伝言板」サービスをあらかじめ確認し、使い方に慣れておくとよいでしょう。

    なお、災害時はスマートフォンの充電が十分にできない可能性もあるため、不要不急の利用は控え、バッテリーの消費を抑えることも意識してください。

    ヘルプカード・耳マークを活用する

    自分が難聴であること、補聴器を使用していることを、周囲や避難所のスタッフに知ってもらうことも重要です。

    ヘルプカードや「耳マーク」のバッジ・カードなどを身につけておくことで、初対面の相手にも一目で伝えることができます。

    そうすることで、筆談やゆっくり話してもらうなどの配慮を受けやすくなります。
    また、放送や口頭での案内があった時にも、周囲の人に助けてもらえるかもしれません。

    避難所に到着したら、受付や運営スタッフに「難聴があり、聞き取りにくいことがある」と伝えておくことも、その後のスムーズな情報伝達につながります。

    避難所で隣近所になった人にも伝えておくとよいでしょう。
    ただし、その人たちの善意に頼ることになるので、お互いがサポートしあえるよう、出来ることを自ら積極的に行うことも大切になると思われます。

    5 自宅でできる平時の備え

    聴覚障害に対応した警報機器

    一般的な住宅用の火災警報器は「音」で知らせるタイプがほとんどのため、難聴の程度によっては気づきにくいことがあります。

    光(フラッシュライト)や振動で知らせるタイプの補助警報装置も市販されており、自宅の状況や難聴の程度に合わせて導入を検討する価値があります。

    自治体によっては、こうした聴覚障害者向けの日常生活用具に対して助成を行っている場合もあるので、気になる方はお住まいの自治体に問い合わせてみてください。

    補聴器の保管場所を防災目線で見直す

    地震で棚から物が落ちてくる場所や、浸水の可能性がある低い場所に補聴器を保管していないか、一度確認してみましょう。

    家族・周囲との連絡方法を決めておく

    離れた場所で被災した場合の集合場所や連絡方法を、家族であらかじめ話し合っておくことも大切な備えの一つです。

    特に音声通話に頼れない状況を想定し、テキストでの連絡手段を共有しておくと安心です。

    普段から近所づきあいを

    普段からできることとして、隣近所とコミュニケーションを取っておく、ということがあります。

    音が聞こえづらいことを知っておいてもらえると、避難についての情報が出た時に教えてもらえるかもしれません。

    これは、近所だけではなくよく参加するコミュニティ(自治会、習い事、仕事など)でも同様です。

    難聴であること、補聴器を使っていることを隠すのではなく、普段からオープンにしておくことで、いざという時にあなたにとって最適なサポートを受けることができるでしょう。

    6 まとめ

    補聴器ユーザーにとっての災害への備えは、「聞こえない・伝わらないことで生じるリスク」をいかに減らすかがポイントです。

    • 補聴器や周辺アイテムを非常持ち出し袋に入れておく
    • 筆談用具やヘルプカードなど、聞こえに頼らない伝達手段を用意する
    • 電話がつながらない時はテキストメッセージを活用する
    • 普段から周囲の人に、聞こえづらいこと、補聴器を使っていることを知っておいてもらう

    すべてを一度に完璧に準備する必要はありません。

    まずは非常持ち出し袋に予備電池を1つ足す、ヘルプカードを作ってみる、といった小さな一歩から始めてみてください。

    日頃の少しの備えが、いざという時のあなたと大切な人の安心につながります。

     

    こちらは東京都福祉局のサイトの中にある、耳の不自由な人のための防災情報ページです。

    わかりやすく、細かな点まで記載されていますので、ぜひ一度読んでみてください。

    耳の不自由な方のための防災マニュアル|防災のことを考えてみませんか ~防災マニュアル(障害当事者の方へ)~|東京都心身障害者福祉センター

     

    上記ページの情報を両面1枚の紙に印刷できるようまとめたものが下記ページです。

    プリントアウトしておいて、家族と情報を共有し、非常持ち出し袋に入れておくのはいかがでしょうか。

    耳の不自由な方のための 災害時初動行動マニュアル_東京都福祉局

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