
補聴器は、日常生活を支えてくれる大切な相棒。できるだけ長く、快適に使いたいですよね。
そのためには、「日常のお手入れ」と同じくらい「保管の仕方」が非常に重要です。
補聴器は精密な電子機器であり、適切な保管はその寿命と性能を大きく左右します。
「しまっておくだけなのに?」と思われるかもしれませんが、実はここが大きな分かれ道。適切な場所に保管することで、故障や破損のリスクを減らしてくれます。
本記事では、補聴器を長持ちさせるための保管方法について、詳しく解説します。
目次
1 補聴器保管の基本原則
1.1 3つの大敵から守る
補聴器の主な敵は「湿気」「高温」「物理的衝撃」の3つです。
これらの要因から補聴器を守ることが、適切な保管の基本となります。
毎日のお手入れ後、ぜひ安全な場所に保管して、次の日の準備を万全にしましょう。
1.2 適切な保管場所の5つの条件
補聴器に優しい保管場所を選ぶための 「5つの条件」 を紹介します。
条件1: 温度変化が少なく、涼しい
極端な高温や低温は、内部の電子回路やバッテリーに負担をかけ、劣化を早める原因になります。
また温度変化が大きいと、結露のリスクが高まりますので特に要注意です。
条件2: 湿度が低く、風通しが良い
補聴器の大敵は「湿気」です。汗やわずかな湿気が内部に溜まると、故障や音質不良の原因に。特に日本は湿度が高いので要注意です。
条件3: 平らで安定しており、落下の恐れがない
ちょっとした衝撃や落下で、内部の電子部品が損傷する可能性があります。安定した平面に置くことが基本です。
条件4: ペットや子どもが触れない
好奇心旺盛なペットやお子様は、思わぬ事故の原因に。
誤飲の危険もありますので、絶対に手の届く場所に置きっぱなしにしないでください。
条件5: 飲み物や水分に触れる心配がない
水分は一瞬で補聴器をダメにしてしまう可能性があります。飲み物をこぼすなんて、もってのほかです。
最近は防水仕様の補聴器が多くなってきましたが、防水仕様でも完全防水ではないことが多いです。
お風呂に入るときは補聴器を外しますが、その際の保管場所も水の危険から遠ざけましょう。
1.3 5つの条件をすべて満たす「最強の保管場所」は?
では、これら5つの条件をすべて満たす場所はどこでしょうか?
おすすめは、「寝室のサイドテーブルの中にある専用ケース」や 「寝室の棚やタンスの上に設置している充電器や補聴器乾燥機」です。
その理由は…
- 寝室はリビングに比べ温度変化が少なく、飲食をする機会も少ない(条件1,5)
- 引き出しの中や高いところは、ペットや子どもが触れにくく、落下の心配もない(条件3, 4)
- ほとんどの補聴器は購入時に収納用のケースがついているので、日中はその中での保管が安心です。(条件2)
- 夜に補聴器を専用の乾燥ケースや乾燥機に入れれば、湿度対策もバッチリ。電気式の乾燥機は、棚やタンスの上の電源が届くところに置くのがよいでしょう(条件2)
- 充電式補聴器は、夜に充電する場合も「寝室の棚やタンスの上の電源が届くところ」に充電器を置くのがおすすめです。(条件3)
それ以外に、カギなどの貴重品置き場、ジュエリーケースなどもおすすめです。
その理由は…
①見つかりやすい場所だから
②紛失しにくい場所だから(必ず専用ケースにいれる)
③家族全員が把握できる場所だから
1.4 絶対に避けるべき保管場所
浴室・洗面所
■理由:
湿度:家中で最も湿度が高い場所です。湿度は70%以上になることも珍しくなく、補聴器の内部回路に悪影響を及ぼします。
結露の発生:温度変化により内部結露が生じ、電子回路の腐食や短路の原因になります。
化学物質の影響:シャンプー、整髪料、化粧品などの揮発成分がプラスチック部品を劣化させる可能性があります。
水はねのリスク:洗面台の近くでは、思わぬ水はねの危険があります。
キッチン周辺
キッチンもまた、保管場所として不適切な環境です。
■理由:
油煙の付着:調理中の油煙がマイクやスピーカーに付着し、性能を低下させます
急激な温度変化:冷蔵庫やコンロの近くは温度変化が激しく、内部結露の原因になります
水蒸気の影響:炊飯器ややかんからの湯気が内部に侵入するリスクがあります
窓辺や直射日光が当たる場所
直射日光は補聴器にとって危険です。
■理由:
熱による変形:外装のプラスチックが変形したり、変色したりします
内部部品の劣化:電子部品は熱に弱く、高温で寿命が縮みます
温度差による結露:昼間の高温と夜間の低温の差で結露が発生しやすくなります
エアコンの吹き出し口付近
エアコンの風が直接当たる場所も避けるべきです。
■理由:
温度変化:冷房や暖房の風が直接当たると、部品に負担がかかります
ホコリの巻き上げ:エアコンの風でホコリが舞い上がり、補聴器内部に入り込む可能性があります
2 旅行や外出時の保管方法
2.1 移動中の保管
- 専用ケースの使用:衝撃から守る硬質ケースがおすすめ
- 機内持ち込み:預け荷物にはせず、必ず手荷物で持ち運ぶ
- 温度変化への配慮:寒い場所から暖かい場所への移動時は、結露に注意する
2.2 宿泊先での保管
- 安全な場所の確保:デスクの引き出しやクローゼットを利用する
- 貴重品として扱う:フロントに預けるか、室内の金庫を利用する
旅行時の補聴器使用の注意点は下記の記事も合わせてご確認ください。
3 保管に関するよくある質問
Q: 補聴器を長時間保管ケースに入れておいて大丈夫ですか?
A: 長期間(数カ月~)の場合は、電池式なら電池を必ず取り外しておくこと(液漏れ防止)、充電式なら定期的に充電すること(完全放電や過放電を避ける)、乾燥ケースに入れていればシリカゲルは一定期間ごとに交換すること、が必要です。
また、たまに動作チェックをおすすめします。
Q: 保管用の乾燥剤はどのくらいで交換すべきですか?
A: 一般的なシリカゲルは、変色したら交換のサインです。使用頻度にもよりますが、1〜3ヶ月が目安です。
乾燥剤の使用について下記記事も合わせてご確認ください
Q: 誤って水に濡れてしまった場合の対処法は?
A: すぐに電池を取り出し、表面の水分を拭き取った後、乾燥ケースに入れてください。
その後、できるだけ早く販売店に点検を依頼しましょう。詳細は下記記事も合わせてご確認ください。
4 まとめ:保管は「習慣」が大事
いかがでしたか? ほんの少し意識するだけで、補聴器を危険から守ることができます。
まずはご自宅の中で、「この場所は5つの条件のうちいくつ当てはまるかな?」とチェックしてみることから始めてみてください。
そして、面倒でも「使ったら専用ケースにしまう」という習慣を身につけることが、何よりも大切です。
補聴器はあなたの聞こえをサポートする大切な相棒です。
適切な保管で、長く良好な状態を保ちましょう。